平成21年10月7日付けで内閣府の地方分権改革推進委員会から提出された第3次勧告において、博物館法第12条及び第21条について、廃止または条例への委任が勧告されました。この勧告は近年の博物館法の改正の考え方および現在も継続して検討されている「望ましい博物館の在り方の検討」の方向とは整合しないもので、拙速な決定は問題を残すものであると考えます。さらに、日本の博物館が、資料を充実し組織や施設を整える基盤を失うことになりかねません。
博物館法に規定された登録博物館の制度とは、博物館を設置し、その活動を維持する上で必要な資料・組織・施設という博物館の構成要素が、一定の水準以上にあることを公的に認める制度です。今回の勧告では博物館法第12条の登録用件の審査基準について、博物館の年間開催日数を除く資料、学芸員その他の職員、施設に関する条件の廃止、条例への委任が示されています。第12条に明示されている博物館登録の具体的な要件がなくなることは、登録要件そのものがなし崩し的に空洞化・形骸化し、無意味なものになってしまう恐れがあります。この改正によって都道府県毎に基準や判断にばらつきが生じ、結果として博物館の質に地域的な不均衡が生じることが危惧されます。こうした事態は、国の政策として芸術や文化振興と生涯学習の拡充を掲げる一方で、その一翼を担うとされている博物館について、現行法およびその運用、関連する行政通達等で維持されてきた博物館の質の担保を目的とする登録博物館制度自体の存在意義を揺るがしかねないばかりでなく、これまで培われてきた多くの登録博物館に対する国民の信用すら失墜させかねません。
また、博物館法第21条の博物館運営協議会委員の資格に関する条文の一部廃止または条例委任は、昨年の第169回国会において、博物館協議会に利用者(受益者)を代表する者の参画を積極的に進めるために、同条を改正した意味を損ないかねないものです。
今回の勧告の内、博物館法に関するものについては、上記のような問題があると我々は考えます。無論、いたずらに規制を強化することやフレキシビリティーを圧迫することは望ましいことではありませんが、わが国の博物館を国際的なレベルに育てることを主導できるような方向、文化の質を守り、高めてゆく方向での検討こそが望まれるのであって、これを危うくする可能性をはらむような改正には賛同できません。
以上、日本民具学会として声明します。
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